・・・2015.09.07更新
今日はバラの水揚げについてです。
水揚げってなぁに?という方の為に、ざっくりと説明。。。
生産者さんが切花を収穫し、市場に出荷してからお花屋さんに入荷するまで約1日~2日くらいかかります(実際もっとかかるものもあります)普通に考えてフレッシュな状態ではありません。今でこそ「湿式輸送」と言って水を吸いながらの輸送が増えてきましたが、一昔前は「乾式輸送」すなわち吸水無しの輸送がメインでした。だからお店に着いたお花はグッタリ・・・そんなくたびれたお花を再びシャキンと復活させる技を俗に水揚げと言います。水揚げの方法はお花の種類によって、またはお店によっても様々で、これといった正解はありませんが、しっかりと水が上がればそれが正解です。
私が初めて勤めた花屋では、まず葉をサッと取り除いたあと、「トゲ取り」というステンレス製の器具で茎をしごいてトゲを取っていました。早く確実に取れますが茎は傷だらけです。試行錯誤の末、のはなでは手でしごいて葉とトゲを一気に取ります。軍手はしますが最初はかなり勇気が必要です。
これにより茎はほぼ無傷のまま葉もトゲも取れます。植物が水分や養分を吸い上げる器官を導管といいますが、バラはこの導管が茎の表面に近いため、傷だらけの茎は水の上がり具合がよくありません。穴だらけのストローだと水が吸いずらいイメージです。このあとに取りきれなかったトゲの先端や、葉の裏側に付いている細かなトゲをナイフで軽く取り除きます。
さらに切り口をナイフで斜めにカットします。真っ直ぐにカットするより導管の断面積が広がるため、より多くの水分を上げられるのです。綺麗な切り口にするための作業なのでナイフはあらかじめ除菌しておきます。
ここが最大のポイントでしょうか、バラは新しい切り口に自己防衛の為に薄い皮膜のようなもの(人で言う初期のかさぶたのようなもの)を張ります。その時間わずか3秒!したがってナイフでカットしたら3秒以内に水につけます。ちなみにこの水には栄養剤が入っています。新鮮な切り口から栄養たっぷりの水分をたくさん吸い上げられるという事です。
この3秒ルールを取り入れてからバラの日持ちが格段に上がったような気がします。なのでお客様にもオススメしています。昨年の12月26日に市場で仕入れた内田バラ園さんの「アプラディル」は3秒ルールのお陰か、ただの偶然か、花持ち2ヶ月を記録しました。内田さん本人もビックリの2ヵ月後のアプラディルがこちら・・・
尊敬する薄木健友さんの「切花の水揚げと鮮度保持に関する講習会」に参加して以来、のはなではちょっとした意識改革が起こっています。どうすれば切花を長持ちさせることができるのか?それをどのようにお客様にお伝えしていくか?という当たり前の事を今まで以上に考えるようになりました。そしてこの鮮度保持への取り組みは、突き詰めていけばいけばいくほど、業界では当たり前のように浸透している「切花5日の日持ち保障」でさえ生ぬるく感じてしまうのです。ということはやはり、切花が長持ちすることでのお客様の満足感と、そこから得られる信頼の為に、この鮮度保持の考え方や取り組みは競争力のひとつとなるはずです。さらに、この取り組みは小売店のみならず、種苗会社、生産者、流通、花卉市場など、切花に関わる全ての人達の足並みが揃わなければなりません。たとえば、そもそも意識の低い生産体制であったり、高品質の商品であっても輸送時点で品質低下したり、情報共有や差別化を行わずに販売してしまったり、誰かが頑張っても何処かで足を引っ張られては、まとまるものもまとまりません。すべてはお客様の満足のために、その追求こそが花卉業界の成長だと思うのです。
最後に本日入荷した内田バラ園さんの「ピンクレディブル」をご紹介。咲き進んでからの花形がとても綺麗です。すばらしい品種選抜です!
・・・2015.08.29更新
「ユリの花びらは何枚でしょう?」
普通の人はパッと思い出せないかもしれません。
お花屋さんや花卉市場、生産者の人なら99%の人が「6枚だろ?バカにするな!」と答えるでしょう。
面倒くさいのですが正解は3枚です!!
ユリの花を正面から見てみましょう。三菱のマークが前後に重ならないように並んでるの判りますか?
内側の3枚が花片、後ろの3枚がガク片です。ガクはおおまかにいえばツボミの時に花片を覆う外皮です。
ユリのガク片が花片を覆っている画像がこちら
チラリとめくれたガク片の中に確かに花片がありますね。しかし一般的にユリのガク片は花びらの一部とされているので「花びら6枚」でOKです。
「では雄しべの数は何個でしょう?」
安心してください!6個です!
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今日は素敵なユリを紹介しようと思ったのですが、せっかくなのでもう少し深くいきます。
ユリはよくアルファベットで簡易表記されます。
A・・・アジアティックハイブリッドは、いわゆるスカシユリです。
L・・・ロンギフローラムハイブリッドは、いわゆる鉄砲ユリです。
O・・・オリエンタルハイブリッドは、カサブランカなどに代表される大輪芳香のユリです。普通に「オリエンタル」の名で流通します。
T・・・トランペットオーレリアンハイブリッドは、アジア産の鉄砲ユリが元になった交配種で、花色が豊富です。
※本当はまだまだありますが割愛
しかしここで終わらないのが人類!鉄砲ユリ(L)とスカシユリ(A)を交配させ、LAリリーなんてものを作り出しました。これは鉄砲ユリの花形とスカシユリの豊富な花色が良く出ている傑作です。
さらに鉄砲ユリ(L)とオリエンタル(O)を交配させ、LOリリーなんてのも作ってしまいます。これはオリエンタルの芳香と鉄砲ユリの小ぶりな花形が良く出ていて、その特性やサイズなどから、生産者の梱包輸送にかかるコストを抑えられることから今後期待が高まっている種類です。
さらにオリエンタル(O)の芳香と、幅広い花色を持つトランペット系(T)を交配させたOTリリーがあります。OTリリーといえば「イエローウィン」や「コンカドール」などの黄色/オレンジ色が主流ですが、白系も多少存在します。
シルクのような艶に、ほんのりシルバーがかった花色はとても上品で、個人的にはカサブランカを越える逸品です。最初の画像はオリエンタルのシベリアという品種なのですが、花びらに乳頭状突起というブツブツがあるのが判りますか?ザンベジにはこの乳頭状突起がなく、美しい花弁もまた魅力です。
よく市場でのセリ中に、聞きなれない品種のユリが登場すると、花屋さんから「それオリエンタル?」などとセリ人に質問が飛びます。たいがいは「オリエンタルです!」というセリ人の回答で終わってしまうのですが、「オリエンタルとトランペットオーレリアンの交配種です!香りもよくて花びらもシルクみたいに綺麗ですよー!」くらい言えば少しは相場も良くなると思うのは僕だけでしょうか?
・・・2015.08.25更新
千葉県は鈴木花卉園さん生産のジニアです。「クィーンレッドライム」や「グリーンライム」を中心とした色々ミックスです。個性的な花色が魅力です。
ジニアは和名で「百日草」と呼ばれ、地植えなどでは開花期間が長い事で知られます。ただ切花ではあまり日持ちしそうもないといった勝手な印象と、昔からあるジニアの花色や形が使いづらいなどの理由から、敬遠しがちな花材でした。ところが数年前に大田市場の仲卸で初めて(今回の品種と同じか定かではありませんが)↑これに似たものを見かけ、一目惚れして購入したところ、敬遠していた理由のひとつ、日持ちの概念が覆りました。さすが時期の花、夏場でナント2週間も持ってしまいました!ただしいくつか注意が必要です。
1.ジニアやガーベラ、ヒマワリといった、「茎が産毛っぽい花」はすぐに水が汚れるので、水替えの頻度をあげること。
2.水量が多いと茎の痛む面積も多くなるので少なめに!水量4〜5cmもあれば十分です。
3.とは言え、吸水量がとても多く、すぐに水が減るので水切れに注意が必要です。
4.ストローのような茎はとても繊細で折れやすいため、取り扱いに注意です。
これらを踏まえれば積極的にお客様にオススメしたい花材ですね。
ただひとつ問題があります。
それは「なかなか一般受けされずらい色」ということ。アンティークっぽい色合いは個人的には大好きなのですが、ご年配のお客様には特にウケが悪いです。なのでこの素敵なジニアをもっと魅力的に見せるには、我々フローリストの技量にかかっていると言えるでしょう。
・・・2015.08.22更新
新潟県よりマイクロカーネーション「ラフィーネシリーズ」4種類が入荷しました。
この「ラフィーネシリーズ」は株式会社M&Hブルーメンという種苗会社さんが取り扱いをしており、国内ではわずか数名の生産者しか作っていない希少品種です。
のはなでは今年の春に千葉県の鈴木花卉園さんが生産されたラフィーネを販売しましたが、1.日持ちが非常によい。2.ボリュームがある。3.花色が豊富で様々な色合わせに対応できる。4.ナデシコの可憐さもありながら、品種によってはシックな装いのものもあり、幅広い花合せに対応できる。5.暖地や高冷地の産地切り替えなどで、ほぼ周年入手できる。6.販売ロットが少量なので、多品種を置きたい小売店にはありがたい。
などの手応えやメリットを感じました。特に日持ちに関しては、固めのツボミまでもがしっかりと開花し、当店の試験観察で約4週間の日持ちを記録しました。
いずれにしてもこういった希少なお花は、ただ並べて売るのではなく、お客様に良さをキチンと説明できなければならないと思います。と同時に、「花が店を選ぶ」時代になった事を思い知らされます。
今回のラフィーネは猛暑の影響で、ボリュームやフォーメーションなどクオリティとしては今ひとつですが、価格を下げてご提供させていただいておりますので、是非おためしください。
・・・2015.08.15更新
明日16日に送り火を焚いて、いよいよお盆も終わります。期間中はたくさんのお客様にご来店をいただき、ありがとうございました。
毎年の事ですが、ご先祖様や故人を偲び、御墓参りに花をお持ちになるお客様方と対面すると、職業上みなさんと同じ期間にお墓参りに行けない自分を呪ったりします。
お墓参りのお花といえば、全国どこでも同じような内容のお花を容易に想像できますが、近年、花屋の若返りや時代の変化とともに、その様相にも変化が見られるようになりました。即ち「もっとオシャレに」とか「もっと可愛く」などのニーズが増えてきているということです。確かに、人は十人十色なのに、お参りのお花が画一的なのは花屋のエゴかもしれませんね。
こちらは当店、お盆だけの限定花
「たまにはこんな可愛い仏花」
・・・2015.08.11更新
開店祝いのスタンド花のご注文をいただき、制作納品させていただきました。この時期に屋外で開店を祝うお花達は大変です。炎天下という過酷な環境なので、フレッシュなお花を使用してもすぐにくたびれてしまいます。のはなでお作りするスタンド花は、できるだけ多くのお花を入れる事で密度を高くし、環境によりやむを得ずくたびれてしまうお花が、周囲のお花達に支えられて、派手にだらしなくならないよう注意しています。開店時にお客様がお花を抜いていく関西地方の祝い花と違い、関東の開店祝いのお花は、枯れて見苦しくなるまで店頭に飾られます。高いお金を頂戴しているので、なるべくいい状態で長く飾られていて欲しいという願いが込められています。
・・・2015.07.24更新
ショップが定休日の水曜日に、埼玉県川越市で切花のバラ生産をされている内田バラ園さんにお邪魔しました。のはなで扱っているバラの7割は内田さんのバラです。真面目で丁寧、勉強熱心、内田さんの人柄がバラにも表れています。そしてなにより品種選抜が抜群です。なんとなく女性が好みそうなエレガントな印象の品種を選抜している感じを受けます。個人的には3度目くらいの訪問なのですが、当店の笠井さんに圃場を見学させてあげようと思い伺ってまいりました。ハウスに入るとまず目に付くのがこちら
水と液肥を混合して、自動で施肥をおこなう装置です。ハウスの天井には遮光カーテンが施されており、さらに屋根の外からは流水を掛け流してハウス内の温度を調整しています。さらに奥へ行くとこんな感じです。
気になったのは通路の足元に下がっている枝葉や花たち。。。
バラに光合成をさせるため、あえて折られた枝なのだそうです。折ってしまった枝は枯れないのか?と思いますが、ねじりながら折ることで水分を吸い上げる「導管」の損傷を最小限に抑えています。これを「葉殺し」を呼ぶそうです。収穫する枝、光合成をする枝、株ごとに役割分担しているのですね。
個人的に好きな品種「コーラルハート」
内田さんのバラで一番好きな「ヴァーグ」
収穫されたばかりの「サムライ」
保冷庫で出荷を待つバラたち
夏は高温障害でバラの花びらの数も少なくなり、そのせいで花の大きさも小さくなったり、花色もぼやけてしまい、理想的な花姿にはなりません。おまけに日持ちも悪く、お花屋さん自体も閑散期のため取引も小さくなり、労力に見合った値段が付きません。生産者さんもお花屋さんも我慢の時期です。運営責任者の内田さんとは同い年で、これからの花卉業界の混沌を考え歩く仲間として、今後も交流を深めていきたいと思います。