・・・2025年03月28日更新
それは1本の電話からでした。
卒業式シーズンのこの時期、毎年多くの学校に演台用生花を納品していますが、とある学校の先生から次のようなお電話を頂戴しました。
「演台用生花に菊の花が使われていますが、これは問題ないのでしょうか?他の花を納品に来た別の花屋さんがこれは葬式の花ですよと言っていたので、保護者の手前、どのように説明したら良いか・・・」
なるほど、かなり悲痛な声色で、とても困った様子が電話越しでも伝わりました。まずは問い合わせづらい内容のお電話をかけてくださった事に感謝し、「菊=葬式」という不用意かつ不勉強な発言を安易に発した花屋にかわり、この場を借りてお詫び申し上げます。
さて皆さんは菊の花についてどのような印象をお持ちでしょうか?日本では仏事やお供えの際にとりわけ多く使われることから、あまり縁起の良い印象はないのかな?と感じています。
確かに葬儀や仏花でよく使用される「一般的な白い菊」には、商品制作している私自身もそのような印象を持ち得ます。しかしどうでしょう?近年多くの種苗会社が心血を注ぎ誕生させた、数多の菊の中には「菊=葬式」という古臭い概念を払拭するものが数多く存在すると、業界に身を置くものの1人として自信を持って言わせていただきます。
菊は英語で’’mum’’=マムと呼び、近年市場を賑わせている色とりどりのマムは、日本の菊がヨーロッパにわたり品種改良されたものです。日持ちが良く品種も多い、個性豊かで様々なシーンで使われることからヨーロッパを中心に海外では大変人気で、オーストラリアでは母の日にマムが贈られるほどです。排他的な島国思考にはおよそ理解不能でしょう。
あと自分は花言葉というものがあまり好きではありません。誰が決めたか?明確な定義もありませんし、花言葉の本なるものによっても見解は様々。しかしそんな花言葉の世界を覗いてみてもマムにはポジティブなワードが多いことがわかります。
また、法で定められているわけではありませんが「菊」と「桜」は日本の国花です。皇室の紋章も「菊」であることから格調高く、荘厳な卒業式という場に国旗は飾れど菊の花がふさわしくないはずはありません。
先日、皇居・宮殿にて、国賓として来日したブラジル大統領を歓迎する宮中晩餐会が行われ、その様子をテレビで拝見しましたが、各テーブルに飾られた卓上アレンジメントには可愛らしいピンポンマムがてんこ盛りでした。
ピンポンタイプの’’セイオペラ’’は、まるで皇室の「十六八重表菊」の紋章のよう。
こちら、ダリアと見紛うほどの雰囲気を醸し出すディスバッドマム’’サイレント’’はウェディングでも使用されるほど。
チャートカラーが清々しいデコラ咲きの’’ゼンブラライム’’は初めて見た時の衝撃をいまだに忘れられません。
結局のところ、人の死に関連する機会や場で多く目にする一般的な白い菊が潜在的に「菊=ネガティブな花」として印象付けされたもので、本来であればそういったエンドユーザーを正しくリードしていかなければいけない花屋が情報のアップデートを怠り、業界の情勢やトレンドから置いてけぼりを喰ってしまった結果が招いた出来事です。
学校の先生の不安を煽り、いたずらに混乱を招いた勉強不足の花屋さんには是非とも襟を正して欲しいところです。
今年の卒業式、各学校さんの演台用生花に使用したマムはスパイダー咲きの’’サフィーナ’’
「とても良かったです」と、わざわざお礼を言いに来られた学校さんも・・・
花屋冥利に尽きます。感謝